病と生きる。希望と生きる。写真展 ~まだ見ぬ答えを、生み出す未来へ~
日本製薬工業協会は、公益社団法人日本臨床腫瘍学会、一般社団法人日本癌学会、一般社団法人日本癌治療学会、一般社団法人CancerXの4団体の協力を得て、梅田蔦屋書店(ルクア イーレ 9階)にて、2024年3月25日~3月31日まで「病いと生きる。希望と生きる。写真展 ~まだ見ぬ答えを、生み出す未来へ~」が開催しています。
本写真展は2023年12月の東京・原宿での開催に続く第2弾です。
開催初日はオープニング発表会が行われ、本写真展に協力した高橋氏、谷島氏、ポートレートを撮影したハービー・山口氏とともに、医療従事者、患者、製薬企業等のそれぞれの立場における医薬・医療領域での課題や挑戦、撮影時のエピソードや未来に向けた想いなどをテーマにトークセッションが行われました。
開催趣旨
医療が発展した現在でも、治療法が見つかっていない、有効な薬が開発されていない、治療に伴う負担がある、などの「アンメット・メディカル・ニーズ」や、海外で承認されている薬が日本で承認されていない、または開発自体が行なわれていない「ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス」と呼ばれる課題などが存在します。
本写真展は、4団体の協力のもと、病気と向き合っている患者さんやそのご家族、がんサバイバーの方や支援者、医療関係者など、さまざまな立場で病気と闘いながら希望を失わずに挑戦している姿や想いを、ポートレートやメッセージの形で展示しています。
なお、撮影対象となった方のうち4名が関西在住です。
本写真展を通じて、医薬や医療の課題に対する気づきを促し、自分自身が当事者と感じていない多くの人々に、無関心から関心へ、無理解から理解へと変化を促したいと考えています。
トークセッションの様子
トークセッションでは、日本製薬工業協会 会長 上野 裕明(うえの ひろあき)氏、日本癌治療学会所属 大阪大学 大学院医学系研究科 医学科教育センター高橋 剛(たかはし つよし)氏、ダカラコソクリエイト 発起人・世話人/カラクリLab. オーナーの谷島 雄一郎 (やじま ゆういちろう)氏が登壇。
高橋氏と谷島氏は実際の主治医と患者の間柄でもあります。
写真を撮影した写真家 ハービー・山口(やまぐち)氏をゲストに迎え、それぞれの立場から病気や医療に対する想いと、写真展に込めた想いなどが語られました。
自身もGIST(ジスト)という希少がんを患っている谷島氏は、当初、ハービー・山口氏が患者に笑顔を要求することに対し、感動のコンテンツとして消費されてしてしまうのではないかと否定的だったそうですが、ハービー・山口氏の想いや、その写真を見ることで考えが変わったと話します。
「今回の写真展の写真は、安易に患者の笑顔を撮って感動のコンテンツとして消費してしまうようなものではないんですよね。何が他のものと違うのかなと考えたときに、ハービーさんが僕におっしゃった『僕は写真を撮るときに、その人の幸せを願うんだ』という一言に集約されているのだと思います。ハービーさんの写真には、お互いの幸せを願いあうという関係性ができているんですよね。その人の今までいろいろ関わってきたもの、そしてこれからも含めてお互いの幸せを願い合う、それがすごくこれらの写真を創り上げてるんだなというふうに感じました」
谷島氏は、写真展を通して多くの皆さんが医療領域の社会問題に関わっていくきっかけになれば嬉しいと、想いを語りました。
写真展の様子
本写真展のポートレートを撮影したハービー・山口氏は、幼少年期にカリエスという病気を長く患った経験から、写真のテーマを「生きる希望を撮る」と定め活動しています。
<ハービー・山口氏プロフィール>
1950年、東京都出身。大学卒業後の1973年にロンドンに渡り10年間を過ごす。
現地では劇団に所属し役者をする一方、折からのパンクロックやニューウエーブのムーブメントに遭遇し、ロンドンの最もエキサイティングだった時代を体験する。帰国後も福山雅治、吉川晃司、尾崎豊など多くの国内アーティスト、そして市井の人々にカメラを向け、モノクロームのスナップ・ポートレートというスタイルで作品を残している。
幼少年期にカリエスという病気を長く患った経験から写真のテーマを「生きる希望を撮る」と定めている。その優しく清楚な作風を好むファンは多く、幅広い年代層から支持されている。
写真の他、エッセイ執筆、ラジオのパーソナリティー、講演会などでもこなし、さらにはギタリスト布袋寅泰には数曲の歌詞を提供している。
主な著作に「LONDON AFTER THE DREAM」「代官山17番地」「HOPE空、青くなる」「良い写真とは?」「人を幸せにする写真」など。
作家名のハービーは、敬愛するジャズフルート奏者ハービー・マンより。
受賞歴:2011年度日本写真協会賞作家賞大阪芸術大学客員教授
展示会場は、梅田蔦屋書店内のショールーム。
患者さんやそのご家族、がんサバイバーの方や支援者、医療関係者など、さまざまな立場で病気と向き合いながら希望を失わずに挑戦している方々の姿や想いがポートレートやメッセージの形で展示されています。
谷島氏の主治医でもあり、希少がんである消化管間質腫瘍(GIST)の手術・化学療法を担当している医師の高橋氏がハービー・山口氏にリクエストされたのは、手術が無事に終わってホッとした自分自身の気持ちと、それを患者さんやご家族に伝える時の笑顔。
輝く笑顔の中に感じる凛々しさが、胸に響きます。
会場内には「希望」の花言葉を持つガーベラのステッカーをボードに貼って『HOPE』の文字を完成させる来場者参加型の展示ボードもあります。
登壇者の皆さんも、願いを込めてガーベラステッカーを貼りました。
たくさんのガーベラが希望を彩りますように。
まとめ
本取材を担当したライター"みな"も、数年前に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症という難病を患い、現在も通院を続けています。
普通に生活しているように見えて、実は病を抱えて生きている人、そのせいで生きづらさを感じている人は、私たちが想像している以上に多いのかもしれません。
今や、がんは2人に1人が罹患すると言われる時代です。
私たちが「アンメット・メディカル・ニーズ」や「ドラッグラグ/ロス」などの医薬や医療領域の社会課題を知ること、そして無関心から関心へ、無理解から理解へと知識を深めることで、これまで見えなかった何かが見えてくるかもしれません。