大阪・梅田から一駅という都心部にありながら、戦前の古き良き日本の街並みを残す中崎町。
築十数年の木造住宅とオシャレなカフェが隣り合わせにあるような、新旧カルチャーを調和させた独特の雰囲気が人気。
今回は、そんなレトロモダンな街で愛されるベーカリー「Coffee&Bread main (コーヒーとパン マイン)」をご紹介します。
創業昭和21年の老舗ベーカリー跡地にオープン
大阪メトロ「中崎町駅」を降りてすぐ。
天満方面へと続く「天五中崎通り商店街」のアーケード下を歩いて1分ほどのところに「Coffee&Bread main (コーヒーとパン マイン)」はあります。
目印は馬の親子が描かれた看板。
これは、昭和21年にこの場所で開業した「ブーランジュリーメルク」のものだそう。
今は、「メルク美容室」を営む江川さんがお店の名前を引き継ぎ、「Coffee&Bread main (コーヒーとパン マイン)」を営む内村さんと一緒に店舗の敷地をシェアして、新スタイルのお店を展開しています。
2人のオーナーは先代のお孫さん
「メルク美容室」担当の江川さん。
実は「ブーランジュリーメルク」創業者のお孫さんなんだそう。
ご両親は「メルク」の店名で、現在豊中市でベーカリーを営んでいます。
江川さん:「おばあちゃんの体が悪くなってからお店を閉めたままだったんですが、もう一度この場所を生かしたいと思い、一昨年前から従妹と2人でお店を始めました」
“従妹”とは、同敷地内で「Coffee&Bread main (コーヒーとパン マイン)」を営む内村さんのこと。
2人とも先代のお孫さんなんです。
開業当時の面影を残す店内
店内は、入口すぐのスペースがベーカリー、工房だった奥のスペースが美容室になっています。
なるべくお店の雰囲気を残したいという江川さんと内村さんの想いから、外観・内観ともにほぼ旧店舗のまま。
パン陳列棚も、昔のものを使っています。
内村さん:「ここに並ぶパンは、私の実家“マイン”で焼いたパンです。その日に焼いたパンを車で持ってきて、パン棚に並べています」
「マイン」は、城東区にあるベーカリー。
内村さんの実家も江川さんと同じくベーカリーなんですね。
棚に並ぶパンは40種ほど。
壁伝いのイートインスペースで、淹れたてのコーヒーと一緒に楽しむこともできます。
アップルパイ
内村さん:「これがお店で一番人気!」
江川さん:「看板商品にしたわけじゃないんだけど、なんかすごい出ます 笑」
内村さん:「うちのはシナモンが入ってないから食べやすいのかも。お客さんが口コミしてくれてるのかな」
サクッと歯を入れたくぼみから、ハラハラ崩れていくパイ生地。
煮詰めたリンゴの落ち着いた甘み、シャクリとした柔らかな繊維。
各々主張せず、かといって無理に個性を抑えているところもなく、ただストンとそこにある・そこにいる、という感じの味。
こういうのを“素”の味わいって言うんでしょうか。
今まで食べたアップルパイの中で、一番印象に残るおいしさでした。
また、“おいしい”と思うと同時に、なぜだか身近な人のおいしそうにしている顔が次々に浮かんできて、うれし泣きしそうになるという不思議な感覚も味わいました。
洋ナシのデニッシュ
「洋ナシのデニッシュ」は江川さんのお気に入り。
サクサクのデニッシュ生地の真ん中に、ポンと大きく洋ナシのコンポートがのります。
下にはたっぷりのカスタード。
クロワッサン
江川さん:「フランス旅行へ行った時に食べたクロワッサンと同じ味がします!」
とういのがこちらのクロワッサン。
バターをたっぷり練り込んで、パリサクな食感に仕上げてあります。
山型食パン
内村さん:「食パンの中では山型食パンがよく出ます。牛乳や卵が入っていないのでシンプルな味わい。耳はパリパリ、中はもっちりです。80~90代の方にも人気♪」
バタール
画像だとわかりにくいですが、マインのバタールはかなり大ぶりでドンとした佇まい。
陳列棚左上の定位置に、悠然とした表情で並んでいます。
江川さん:「父の修行先、フランスのバゲットをベースに作っています。子どもの頃、晩ごはんのシチューと一緒に家族で食べてました」
クルミバゲット
当日ちょうど来店されていたお客さんのお気に入りがこちらの「クルミバゲット」。
お客さん:「お、今日はまだある♪」
サクッと香ばしいクラムの内側に、砕いたクルミがコロコロっと忍ばせてあります。
クルミとカマンベール
クルミバゲットと同じ生地で作った「クルミとカマンベール」。
てっぺんがツンツンしていて、角の生え始めた小鹿の頭のよう。
思わず指でなでてしまいます 笑
クラストは軽快。サクッ、サクサクッと明るい音を鳴らします。
ミルクの優しい香り。
くるみのほろ苦いコク。カマンベールの濃厚な舌触り。
口の中でじっくり味の広がりを感じたくなるパンです。
テイクアウト後は、軽くオーブントースターで温め直してから食べるのがオススメ。
クラストのサクッと感が増します◎
アンパンチ
内村さん:「塩味の効いた“ピストレ”っていうパンに、自家製あんこと無塩バターをサンドしています。“ピストレ”は、フランス語で“げんこつ”の意味。だからあんこをはさんで“アンパンチ”笑 レーズンをはさんだのは“レーズンパンチ”」
くまちゃんメロンパン
来店していたお客さん(クルミバゲットとはまた別のお客さん)のお孫さんが大好きなパン。
お客さん:「ここに来る前にメロンパン屋さんがあるのよ。孫に“買ってきてあげよか?”ていうたら、“くまの顔のがいい!”て 笑」
つぶらな黒い瞳に見つめられたら、家に連れて帰りたくなりますよね。
人気パンのようで、取材中に売り切れてしまいました。
クリームパン
やなせたかしさんが描く、あのキャラクターの顔が見える…!
絵本の中から出てきたような、純真無垢なオーラがフワンフワンと漂っています。
グローブ型のとじ目の先までぷっくら。
テカ~っとした朗らかな表情に、こちらの顔もふやっとほころびます。
生地の層は厚めですが全然重たくなく、羽毛布団のようにフカフカ。
クリームはトロリというよりフルフルっとした質感。
口の中に入れると、クリームが体温でやわらかく溶け、綿雲のような生地と一緒に喉の奥へと落ちていきます。
カレーパン
カレーパンといえばこの形だよなぁ~、と、それだけでなんだかホッとさせられるマインのカレーパン。
先がチョンと出ていて胴回りがふっくらしていくので、ラグビーボール型というよりレモン型っていう方が近い感じです。
細目パン粉を両面にまとい、カリッと香ばしい色で仕上げられています。
mainドーナツ
揚げパン系でいくとドーナツの販売もしています。
画像は、フワフワの菓子パン生地を揚げ、グラニュー糖をまぶしたプレーンなドーナツ。
シールに描かれたネコもおいしそうなドーナツを持っています。
クリームチーズスフレケーキ
フワシュワのスフレ生地に、クリームチーズを合わせたプチケーキ。
ちょっと小腹が空いた時にぴったりのサイズ感。
ホワイトラスク
低温でパンの水分をしっかり飛ばし、甘いホワイトチョコレートを掛けて仕上げた特製ラスク。
タルト
画像左側が「クリームチーズタルト」。
右側が「アーモンドタルト」。
マインは、パンもお菓子も添加物不使用。安心して人にもプレゼントできます☆
mainのサブレ
直径10㎝くらいの大きめサブレ。
お店のコーヒーと♫
お客様へひと言メッセージ!
内村さん:「従姉妹同士でアットホームにお店をしています。パン屋、美容室でお客様をシェアしたりして(笑)」
江川さん:「カラーやパーマの合間に美味しいパンとコーヒーを楽しんでください♪皆様のお越しをお待ちしております!」
私がパンにハマるきっかけとなったのが、じつは豊中にあるメルクのカンパーニュ。
その元祖となるお店の跡地だとは訪問時まで知らず、当日かなりの感動でした。
みなさんありがとうございました^^