大阪・梅田駅から徒歩圏内にある中津エリアに、ホップ栽培から醸造、ラベル作りまで自分たちでできるビール醸造所「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」がオープンしました。
本日は、2020年8月29日に開催されたオープニングイベントの模様と、醸造責任者鈴木悟さんのインタビューをお届けします♪
ビール作りから生まれる新しいコミュニケーション
大阪の主要機関が集まる大阪・梅田駅まで歩いて行ける距離の中津エリア。
駅周辺は、オフィス街でありながら、超高層タワーマンションなど居住物件も多くあります。
路地を1本入ると、下町風情の残る戸建てがほのぼのと並んでいて、その合間には「隠れ名店」として口コミで噂になるような飲食店の数々も。
仕事と住まい、新しさと懐かしさの交錯するユニークな街「中津」で、地域の人にビール醸造体験の場を提供するのが「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」。
仕掛け人は、街づくりにおける各種コンサルティングを事業とする「株式会社NI-WA」。
オリジナルビールを協働してつくる中で、関わり合う人の間にも新しいつながりを醸成させ、地域コミュニティーを活性化させることを目的としています。
クラフトビールって?
クラフトビールは、直訳すると「職人のビール」「手作りのビール」の意。
大手企業が量産するビールと区別するために、少量醸造のビールがそう呼ばれます。
アメリカのブルワーズ・アソシエーション(マイクロブルワリーの業界団体)では、クラフトビールのことを「小規模、独立、伝統的」とも定義しています。
少し抽象的な定義になっているのは「何がクラフトビールかは飲み手次第」という考えを基にしているからだそう。
醸造所ごとに違った醸造方法を取っているため、その場所、その季節にしか出会えないビールを楽しめるのも、クラフトビールの魅力のひとつ。
イベントでは、多彩な個性を持つクラフトビールの試飲サービスもありました。
マイクロブルワリーって?
マイクロブルワリーは、直訳すると「小規模醸造所」。
クラフトビールと呼ばれる少量生産のビールを製造する醸造所を指します。
「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」もそのひとつに当たります。
始まりはホップ造りから
NI-WAは、もともとホップ栽培を通じて新しいコミュニケーションを創造することからスタートしています。
現在も、奈良県平群町にあるホップ畑で、仲間と協働作業をしながら交流を深める場を提供し、収穫の喜びを分かち合う取り組みを続けています。
同社の活動に賛同する人が徐々に増えてくると、「ホップ作りをするなら、ビール作りも自分たちでしたい!」という声が高まり「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」の創設に至ったそう。
ハイパー縁側がつなぐ「内」と「外」
「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」は、駐車場2台分のスペース改装して醸造所にしたという、ユニークな場所にあります。
醸造所の外には「ハイパー縁側」と称されるイベントスペースがあり、当日のトークセッションはこの場所で行われました。
ステージを中心にして、階段状に連ねたウッドベンチが観覧席になります。
来場した人は、大きさや段差がさまざまなベンチへ座り、試飲として振舞われたオリジナルビールを楽しんでいました。
日本の文化「縁側」の魅力を生かしたスペース
「縁側」は日本家屋の独特な構造で、部屋と庭との間にある板敷の廊下のような場所を指します。
いきなり知らない人の家の中に入るのは気が引けるけれど、縁側から手招きする人が見えたら「何かな?」と気軽に近づきやすい。
そんな縁側の特長を活用し、「ハイパー縁側」は「内」と「外」をストレスなく自然につなぎます。
醸造責任者 鈴木悟さんの想い
「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」で醸造責任者として運営を任されているのが鈴木悟さん。
訪問当日のオープニングイベントでは、トークセッションのホスト役を務め、さまざまなゲストとビール談議に花を咲かせていました。
普通にしていても笑顔に見えるような、天性的に人を和ませてしまう表情の持ち主。
―本日を迎えられて、今どんなお気持ちですか?
「やっぱりうれしいです。ここまで来れたのも、いろんな人の応援があったからこそです。昨日Facebookに思わず投稿もしました。」
そう言って、その内容を読み上げてくれました。
【オープンを迎えるにあたり】
当たり前の毎日と思って日々を過ごしていれば、こんなタイミングに巡り合うのは人生でそう訪れないと思う。
かといって孤軍奮闘したわけではなく、多くの協力や期待を背負って機会を与えてもらっている。
そんな状況に感謝しながら、明日を楽しみたいと思います^ ^
-鈴木さんのブルワリーに対する熱い想いが伝わってくる文面です。
知れば知るほど面白いクラフトビールの世界
―今回の事業には、どんなきっかけで関わるようになったのですか?
「もともと梅田の地域でホップ栽培活動をしていた主婦の方からの相談からはじまりました。その活動を継続させるため、代表の吉川から『やってみないか』と声を掛けられたのがきっかけです。
それが2018年の11月。
僕らはホップ作りを通じて、共感体験を得られる場の提供から事業をスタートしました。じつはそれまで、クラフトビールってそんなに詳しくなかったんですが、知れば知るほど面白くて。」
―そうしたら、吉川代表は、鈴木さんのビールに対する知見ではないところに魅力を感じ、今回の新事業立ち上げに大抜擢されたようですね。
―代表から、鈴木さんを選ばれた理由を聞かれたりされましたか?
「それ聞いてないんです。今度聞いてみよう 笑。でも、知らない世界だからといって不安とか躊躇するとかはなくて。新しいことに取り組めるワクワク感の方がすごく強かったです。」
―きっとその好奇心旺盛なところが、新事業立ち上げの戦力として求められたのでしょうね。
そのワクワク感を、今日から「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」でシェアすることができますね。
―実際に来場されるお客さんをご覧になって、手ごたえはどうですか?
「すごく自然につながりができている感じがします。ビジネスのイロハとか、そういうのがない空間で純粋なつながりができている。知り合いの人も多く来てもらってるんですが、中には『誰だろう?』って全然知らない人も混ざってる。すごくいい空間になっています。」
―スタッフさんもトークゲストの方もお客さんも、『誰が何役』っていう感じがないですね。
むしろ、全員がスタッフさんでもあり、トークゲストでもあり、リスナーでもある、そんな自由な雰囲気がとても心地いいなと感じました。
ODM方式で作るクラフトビール
また、今日はイベントということでイレギュラーな活動になっていると思います。
―通常は、どのようなことをされるのでしょうか?
「通常はホップの育成から醸造に至るまでのビール作り全般のサポートをメイン事業にしています。」
①苗を配布
②地域住民が自宅の壁面や屋上にてホップを育成
③地域住民みんなでホップを収穫
④地域住民で収穫したホップを集める
⑤集めたホップを醸造
⑥完成したらみんなで乾杯
というODM方式の醸造です。
―「ODM」ってなんでしょうか?
OEM(Original Equipment Manufacturing)が、委託者の製品を指示通り製造すること指すのに対し、ODM(Original Design Manufacturing)は、委託者の製品を設計・製造することを指します。
―「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」で作るビールは、作り手と飲み手が重なるので、自ずと「ODM」方式になるんですね。
作ったビールをみんなで乾杯できる場所
―収穫祭や試飲会というふうに、作るだけでなくイベントも開催できるのが魅力的ですね。
―その際フード類の提供をされたりはしないんですか?
「フードは提供せず、手持ちのものや近隣のお店で購入したものを自由に持ち込めるようにしています。中津エリアには、おいしい飲食店がたくさんあります。そういったお店とのつながりも作れる場になるといいと思っています。」
これからの中津ブルワリー
―これから、「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」はどんな広がりを持っていきそうですか?
「これから、『ハイパー縁側』を使ったイベントも企画していく予定です。流れができてきたら、みんなで作ったビールをここで販売できるようになるのもいいと思います。ビールを作るという活動を通じて、心地よいコミュニティーを広げていきたいです。」
―販売についてなど、経済活性化へのビジョンもキチンと持たれていて、地域コミュニティー内で行う第六次産業のモデルケースになっていきそうですね。
―最後にひとこと、これから「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」に足を運ぶ方にメッセージをお願いできますか?
「中津ブルワリーを通じて、たくさんのビールとたくさんの人に出会って欲しいと思っています。ビールは一人で飲むものではなく、みんなで楽しく飲むものなので、そういったご縁が生まれる場所になってほしです!」
まとめ
「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」で作るビールは、人と人の絆を深めるためのコミュニケーションツールとして機能させることを目的としています。
ビールを共に作ることで、作り手と飲み手、スタッフとゲストといった境界が自然となくなり、その場に集まった人を心地よい一体感に包む。そんな場を提供してくれます。
マンションの屋上で栽培したホップで作ったビールを、住民みんなで乾杯する。
近隣レストランでアイデアを持ち寄って作ったビールを、お店の看板ドリンクとして提供する。
試飲イベントで初めて関わり合う人たち同士で、新作ビールの案を出し合う。
どんな場にするかは、その場にいる人のクリエイティビティ次第で無限に広がっていきます。
これから作られる「Nakatsu brewery(中津ブルワリー)」の新味ビールに目が離せません!